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zero-rating に関する Mozilla の見解

[これは米国 Mozilla の Open Policy & Advocacy Blog で公開された記事 "Mozilla View on Zero-Rating" の抄訳です]

Mozilla がネット中立性を支持する姿勢は、私たち誰もが、オープンでグローバルに成長し続けるインターネットを維持するために闘う必要があるという信念に基づいています。インターネットの広がりと潜在的な可能性を考えれば、そうした闘いには世界中で取り組まなければなりません。ネット中立性に対する注目が世界中でますます高まっていることは、この貴重なグローバル資産の健全性を維持するために望ましいことであり、必要なことでもあると Mozilla は考えています。

例えば、インドではネットの中立性と zero-rating (ユーザにとって通信料無料のサービス) の影響に対する取り組みが重要な転換点を迎えています。今週、Mozilla はインドの首相宛に、ネット中立性を支持する旨のレターを送付しました。これは、Telecom Regulatory Authority of India (インド通信規制局) がインターネットサービスに関して広く関係者の意見を求めたことに対応したものです。多くの Mozillian を含めインドのインターネットコミュニティは、zero-rating とそれがオープンなインターネットに及ぼす影響に対する懸念をはっきりと表明しています。もちろん、Mozilla も懸念しており、Mozilla の会長である Mitchell Baker は、そうした懸念を具体的に説明する記事を自分のブログに投稿しています。その結論として述べているのは、zero-rating という方法では、インドであれ他の国や地域であれ、世界中でまだインターネットにつながっていない数十億の人々を実際につなぐことはできないかもしれない、ということです。

zero-rating は本来、ネット中立性を侵害する典型例であるスロットリング、ブロッキング、有料の優先順位付けをもたらすものではありません。これらはいずれも、トラフィック管理の技術的な違いによるものです。zero-rating では、ユーザがトラフィックを使用するときに適用されるデータ量の上限から一部のインターネットコンテンツやサービスを除外することによって、そのコンテンツやサービスを「無料」にするのです (課金期間にユーザが利用できるデータ量が残っていなければ、それは結果的にある種の「ブロッキング」となることがあります)。

zero-rating は、スロットリング、ブロッキング、有料の優先順位付けと同じような悪影響を及ぼす可能性があります。zero-rating によって 1 社 (またはひと握り) の企業がユーザに無料でコンテンツやサービスを提供できるようになれば、ユーザのインターネットへのアクセスは広がるどころか制約される場合があり、やがては競争や技術革新を抑制することにもなりかねません。技術革新を促進するものとしてインターネットに期待されているのは、誰もがどのようなものでも作ることができ、それを誰とでも共有できるということです。公平な競争ができる環境がなければ、世界は今後、Facebook、Google、Twitter に続くサービスからの恩恵を受けることはないでしょう。

zero-rating については、私たちにはまだ分からないことがたくさんあります。これが比較的新しいビジネスモデルであり、そのメリットやデメリットについてのデータはあまり多くないため、長期的にどのような影響をもたらすのかがはっきり分からないのです。代替性、つまり、一部のサービスが無料で提供される場合に、有料になるという理由でオープンなインターネットの利用を控えたり止めたりするユーザがどれほどいるか、というデータはありません。しかし、「インターネット」と「Facebook」を混同しているユーザの割合が非常に高いことを示すデータはあります。Facebook の Internet.org というイニシアティブがその混同を招いている一因です。とりわけ、Quartz が実施したグローバルなアンケート調査では、回答者の半数以上が、Facebook はインターネット全体を指すという記述に賛成しています

一方、「インターネット」と「Facebook」を混同していないユーザに関するデータもありません。サービスを利用する場合の高額な料金が未だに大きな障害となっているためにモバイルネットワークがスケールメリットを得るまでに至らず、低価格を維持できていない市場があるかもしれません。それまでインターネットにつながっていなかったユーザが、zero-rating で提供されるサービスを利用することでインターネット「らしき」ものを体験し、それがオープンなインターネットそのものにアクセスしたいという需要につながる可能性もあります。本当のところは、どうなのか分かりません。

とは言え、一部の国の政府が実施している、あるいは検討しているように、法律や規則で zero-rating を禁止するという方法は正しい対応策ではないでしょう。極端な法規制を行えば、一部の技術革新が抑制されたり、業界全体での対応が行われなくなったりすることにもなりかねません。さらに悪いことに、どのコンテンツを zero-rating の対象にすべきかを法律によって政府が決められるようになる場合もあります。ネットが中立であることの利点は、ユーザがどのコンテンツにアクセスできるかを誰も決めることができないという点にあるのです。さまざまな市場や政治環境に応じて、個別の分析が必要です。オーストラリアの Netflix が提供しようとして中止された zero-rating プランのように、公式の措置ではなく世論の圧力によって解決される場合もあるかもしれません。

「コンテンツをまったく利用できないより、一部のコンテンツでも利用できるほうがよい」と考え、オープン性や平等な機会よりも、一部のユーザだけが利用できる方法を選びたくなる気持ちは Mozilla も理解できます。しかしそれは、二者択一ではないはずです。新しいモデルが開発されるまでに少し時間はかかるとしても、技術と革新によって、よりよい方法を生み出すことができます。さらに、現在の限られたユーザが利用できる方法を選択することは、短期的にはメリットがあっても、オープンで競争力に優れたプラットフォームの出現が大きなリスクにさらされ、最終的にはユーザの広がりと経済発展を阻むことになります。

対処すべき zero-rating の課題を解決するために役立つと思われる別のアプローチは、いくつかあります。例えば、Mozilla は Firefox OS エコシステム内でそうした別の方法を考え出そうと模索してきました。Mozilla がバングラディッシュで進めている Grameenphone (Telenor Group の子会社) とのパートナーシップでは、ユーザは広告を見ることと引き換えに、毎日 20 MB 分のデータ通信を無料で利用できます。また、Orange とのパートナーシップでは、いくつかのアフリカ諸国の住民が Firefox OS スマートフォンを 40 ドルで購入できます。このスマートフォンで、音声、テキスト、ひと月あたり最大 500 MB のデータ通信を、6 か月間無料で利用できます。このようなプログラムを広げていくことが、長期的に見ればデジタル環境を利用できるユーザの拡大と公平性という、重要で根本的な問題の解決策になるかもしれません。

同様に、例えば新しいアプローチとビジネスモデル、Mitchell が投稿記事で示唆しているような慈善活動への関わりが増える可能性、接続コストを削減する技術とビジネスの革新など、何かを組み合わせることで解決策が見つかるでしょう。ただし、どのような組み合わせにしろ、その基本として、インターネット上での革新と競争を促進する公平な競争の場は維持されなければなりません。

この記事では、zero-rating に伴うプラス面とマイナス面のいくつかの課題について概説を試みました。こうした課題や、利用しやすい料金とアクセスのしやすさに関する課題についてさらに多くの情報を伝えることは、適切な解決策を生み出す取り組みの一環となります。また、さまざまな関係者が一堂に会し、利用しやすい料金の問題を解決する別の方法をめぐって、そうした方法を実現する上での課題を話し合うことも有意義なことでしょう。研究機関やシンクタンクからも、研究を促進するホワイトペーパーという形で解決策が得られるかもしれません。Mozilla は今後数か月間に、これらの方法をさらに検討していきます。

Mozilla は、Mozilla のコミュニティ、業界の他の組織、一般社会の人々、政府、その他の関係各位と協力して、すべての人々が完全な多様性を備えたオープンな Web を利用できるようにする最良の方法を、じっくり考えていきたいと思っています。皆さんもぜひ、こちらの会話に参加してください。

Denelle Dixon-Thayer, SVP, Business and Legal Affairs
Chris Riley, Head of Public Policy
Jochai Ben-Avie, Internet Policy Manager


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