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DRM とユーザニーズへの対応

[これは米国 Mozilla のブログに掲載された DRM and the Challenge of Serving Users の抄訳です。]

Mozilla は現在、完璧な解決策が存在しえない困難な状況の中にあります。ユーザから求められる機能と、ユーザによるコントロールとプライバシー実現のため構築する機能のいずれかの間で選択を迫られています。この状況について以下に説明します。

人々は映画やテレビ番組を含むビデオの視聴を望んでいます。ブラウザがビデオ視聴機能を提供しなければ、そのブラウザはユーザが必要としないものになってしまいます。しかしコンテンツ所有者 (特に映画やテレビスタジオ) の多くは人々がそのコンテンツを使用する、特にコピーを作成する手段を制約するための仕組みを求めています。このような仕組みは一般に DRM (デジタル著作権管理) と呼ばれます。ブラウザにはコンテンツ所有者が満足できる形で DRM を実装することが求められています。これが行われない限り、コンテンツ所有者はそのブラウザを通じたコンテンツ視聴を拒否します。

業界では DRM を実現するための新たな仕組みが導入されようとしています (これまではブラウザへの DRM 機能実装は Adobe の Flash や Microsoft の Silverlight 実現されていました)。新しい DRM では「EME」と「CDM」という頭字語で呼ばれるものを用います。Mozilla はこの新しい DRM 実装手段には従来のシステムと同様に重大な問題があると考えています。すなわちこの仕組みにおいては、個人の保護とデジタルコンテンツの保護との間で適切なバランスが実現されていません。コンテンツの供給側はこのシステムの主要部分をクローズドソースで実装することを求めていますが、それは Mozilla の基本姿勢に反しています。

Mozilla ではこれとは異なる仕組みを強く求めています。しかし現在のところ、DRM に関して業界を変えることは、残念ながら Mozilla 単独では不可能です。Mozilla は以前も Firefox によって業界に変化をもたらしてきましたが、今回もそれを再現しようとしています。しかし現時点では DRM に関して業界に望む変化をもたらすことは不可能です。他の大手ブラウザベンダーである Google、Microsoft および Apple はいずれもすでに新しいシステムを導入しています。また古いシステムは近いうちに廃止される予定です。この結果として、DRM のコントロール下にあるコンテンツをブラウザで視聴するための仕組みは近く新しい DRM 実装のみになります。

Mozilla では新しい DRM に伴う問題点を考慮し、このバージョンの DRM を導入しないことも検討しました。しかしビデオはオンラインの重要な一部であり、ビデオに対応しないブラウザは消費者向け製品として重大な欠陥を持つことになります。Firefox のユーザは DRM によりコントロールされたビデオを視聴するたびに別のブラウザを使わなくてはならなくなり、これは製品としての Firefox の価値を疑わせる結果となります。

DRM について異論はあるものの、Mozilla は Firefox には DRM コンテンツの視聴を可能にするための仕組みが必要であるという結論に達しました。これは業界他社がすでにこの機能を導入したことを踏まえ、個々のユーザの権利を可能な限り損なわない形で行います。主要機能部分については Adobe に提供してもらうことにしました。Adobe はすでにこれまで Flash において DRM を提供してきており、またコンテンツ所有者との間に求められる関係構築も行ってきています。これができるのは Adobe ならではでしょう。

Mozilla はユーザを可能な限り保護する仕組みを構築しました。これによって DRM の根本的な問題が解決したとは考えていませんが、しかしこれを DRM 実装において考慮されていない分野への第一歩となる設計であると見なしています。以下にその例を示します。

  • DRM 機能を使用するか否か、すなわち DRM コンテンツを視聴するか否かの判断は個々のユーザに委ねられます。
  • クローズドソースで実装される部分は、オープンソースで実装された仕組みの中に包んでいます。これによりソースコードが非公開で実装されている部分で行われる処理範囲を監視し、より理解できるようになります。

この詳細については Mozilla の Andreas Gal による 技術解説記事 (英語) をご覧ください。

また DRM の代替手段となるソリューションについても引き続き作業を進めています。Mozilla は個々の人々が自らのコンピュータと生活について決定権を持つことのできる、他のソリューションへと業界が移行することを強く望んでいます。Mozilla は新しい技術を探るためコンテンツ提供側と技術提供側の両方と関わっており、この代替的ソリューションに興味を持つあらゆる人々の参加を歓迎しています。

以下、よくある質問に対する回答をまとめました:

Mozilla は何を行おうとしているのですか?

Mozilla は Firefox ユーザがハリウッド映画をはじめとする人気ビデオを引き続き視聴できるよう取り組んでいます。デジタル著作権管理 (DRM) はコンテンツ供給側によりビデオの利用や配布をコントロールするため使用されており、Firefox などのソフトウェアにビデオを配信するにあたり多くのコンテンツ権利者から要求されています。このようなコンテンツを Firefox に配信するため、Mozilla は Encrypted Media Extensions (EME) と呼ばれる共通の仕様を通じて、Adobe Access という DRM 技術を Firefox のビデオとオーディオ機能で使えるようにします。

Mozilla はなぜこれを行うのですか?

Firefox ユーザはこれまで、Silverlight や Flash などのプラグインをダウンロードすることにより DRM 対応ビデオを視聴できましたが、これらの機能は近いうちに利用できなくなります。他の主要なブラウザベンダーはすでに EME を導入しており、EME は業界共通となってきています。Mozilla は Firefox ユーザがハリウッド映画のストリーミングなど、重要なインターネットコンテンツにアクセスできなくなる事態を避けたいと考えています。また Firefox ユーザがインターネットの重要な用途に他のブラウザを使わざるを得ない状況も望んでいません。

これは Firefox ユーザにどのような影響を及ぼすのでしょうか?

Flash や Silverlight をダウンロードしておく必要がなくなるため、Firefox ユーザにとってはDRM対応ビデオを視聴する際の利便性が高まります。 Firefox ユーザは新しい DRM システムを利用する前に、それを有効にするか否かを判断することができます。

この機能はいつ Firefox に導入されるのですか?

Firefox への実装の詳細についてはまだ最終決定がなされておらず、またブラウザの新機能の常として全ユーザ向けのリリースに先立ち開発者向けの Firefox において数か月にわたるテストが行われます。

どの Firefox でサポートされますか?

この機能は Windows、Mac、および Linux オペレーティングシステムのデスクトップ用 Firefox ブラウザに展開の予定です。

DRM は Mozilla が掲げるオープンなウェブという原則に反するのではないですか?

現時点では DRM の動作にはクローズドなシステムが必要とされ、またユーザーによるコントロールを排除するよう設計されているため、Mozilla は DRM の代替ソリューションを見出すための取り組みを行っています。しかし同時に、このような代替システムの利用が可能となるまでの間、Firefox ユーザはブラウザを通じたストリーミングビデオの視聴に DRM を利用するか否かの自ら判断できるようすべきであるとも考えています。

Mozilla はなぜ Adobe を選んだのですか?

Mozilla が Adobe を選んだのは、(複数のプラットフォームやビデオコーデックのサポートなど) 幅広い機能を提供しながら、ユーザ自身によるコントロール機能と透明性を維持できる設計を共に行っていけるからです。

EME は Android や Firefox OS の Firefox にも導入されるのですか?

現時点ではデスクトップ版 Firefox ブラウザへの展開のみです。

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